外部刺激を勘定するハリガネムシ


外からの刺激に対して脱出すべきか迷うハリガネムシ



ハリガネムシはカマキリの腹部で十分成長した秋頃、水を感知すると外への脱出を決断する。

どうやって外部の水環境を感知するのか。

カマキリ自体は腹部で呼吸をしている(口からではなく)。カマキリが池や川などに浸かることで、カマキリの腹部の中に水が浸入、ハリガネムシはそれを感知しているのだろうと私は思っている。


しかし時として、カマキリが水辺に辿り着く前に、カマキリが不慮の事故に遭うことがある。そのような時、ハリガネムシは一か八かで自発的に外への脱出を始める。何もせずに死ぬよりは、万が一にでも自力で水中に辿り着けるような行動として備わったもの?(ただ単に死にものぐるいの動作かも)と感じる。

さて、私がカマキリを捕まえる際に、中のハリガネムシが危機を察知し脱出をしてしまうことがこれまでに何度かあった。一度ハリガネムシがそう決めると、完全に脱出を終えてしまうのが普通だったのだが、このときはそうではなかった。なんだこれ面白いなと思い、撮影を開始した。


ハリガネムシは脱出しようと身体を出すものの、外部世界に水の気配がないことを感じとり、やはりまだそのタイミングではなかったことを判断したかのようなリアクションを示した。つまり引っ込んだ。「妙な刺激がカマキリの腹部を襲ってはいるが、まだカマキリ自身の致命的な危機では無さそうだな。しかもここは水中でもないから今焦って出ても、自分は無駄死にする確率が高いな」こんな声がハリガネムシから聴こえてきそう。私にとって、ハリガネムシの動きから、生命の瀬戸際の判断基準を感じとれた貴重な経験でした。






おわり