私を刺したスズメバチ

2005年北海道。私は一匹のモンスズメバチの死骸を見つけました。鹿児島では見たことがなかった種類のスズメバチだったので、きれいな状態であれば標本にしようと思って拾い上げましたが、・・・そのスズメバチにはまだかろうじて息があったのです。そんなことは露とも知らずスズメバチを観察していた私の右手親指に、次の瞬間激痛が走りました。ふいに注射で刺されたような具合です。痛みを感じた瞬間もこのハチは死んでいると信じていたので、痛みの正体にはすぐには思い至れませんでした。
よくよく観察すると・・・、このスズメバチは最後の力をふりしぼって針を出したり引っ込めたりしていたのです。もはや動けもしないスズメバチに刺されるなんて、なんてまぬけな刺傷例だろうか。なんて思いながら、痛みとの戦いが始まりました。
どんな痛みなのか説明します。刺された点を中心に親指全体に鋭い痛みが等間隔で走ります。等間隔とは、自身の拍動に合わせての一定のリズム。痛みの強さはなかなか大きくて、注射針が数mm肉にめり込むくらいのイメージでいいと思います。「ズキッ、・・ズキッ、・・ズキッ」という大きな痛みは2時間くらいは続きました。私はハチに刺されたことによるアナフィラキシーショックというアレルギー反応のことも知っていたので、万一の場合はここで死ぬことだってありえるんだよなとか、どんな症状が出るんだろうかとか、病院も遠いはずだよなとか、色んなことが頭をよぎりました。中途半端な知識を持っていたせいで、最初の2時間くらいはずっと恐怖心がありました。虫採りどころではなくなっていましたが、結局数時間経つと痛みも大分小さなものになっていき、ようやく安心できましたが非常に心細い数時間でした。
で、もちろんそこを立ち去るときには、因縁の相手をもう一度拾い上げて回収。怒りに任せて踏み潰す!なんて下品なことはせずに、ジェントルマンらしく「目には目を、は(り)にはは(り)を〜!!」の制裁を。



↑こいつに刺された。刺されたので刺し返しました(標本化)。




今では思い出の、ちゃんハチ(ハチちゃん)です。



教訓:一見死んでいるハチにも気をつけましょう!そうそう、小学生の頃にもう一件事件がありました。瀕死のミツバチを拾い上げた際に、ミツバチの口吻(ハチミツを舐めるブラシ)が指の皮膚に入り込んだことが(どういう理屈か当時も今も理解不能)。3,4mm肉に入り込んでちぎれ、数ヶ月間はハチと合体したまま過ごしたのでした。それも最初の2,3日は結構痛かった。理不尽な被害に絶望感を味わった小さい頃の思い出です。





おわり